yaasuu
大切な輪ゴム
更新日:5月4日
「ここに置いてた輪ゴム、ないねん!捨てられた!!」
とMさんは怒っていました。
「こっちにもたくさん輪ゴムあるよ~」
「ちゃうねん!ここに置いてたやつ!!ばあちゃんがいつも腕にはめてたやつ!!!」
どうも、微妙に大きさや太さが違ったようでした。
わたしには同じようにみえてしまう輪ゴムですが、
Mさんにとっては 2度と手に入らないくらい、ピッタリの輪ゴムだったのです。
誰かが捨ててしまったのか。他の輪ゴムと紛れてしまったのか。
どちらにしろ、もう取り返しはつきません。
お家に訪問させていただくということは、
その方、その家族の価値観の中に入らせていただくことではないか。
そう感じることが多くあります。
とても個人的な空間に他人を受け入れる。
価値観の中にいれる。
なにかが変わってしまうかもしれない。
わたしにはできないかも……
そう思考を巡らせていたら、輪ゴムの一件を思い出しました。
ただの輪ゴムと思って捨ててしまったのかもしれません。
良かれと思って誰かが片づけたのかもしれません。
でも、Mさんには大切な輪ゴムだったのです。
他人が家に入ることをあまりよく思っていなかったMさんですから
怒りもひとしおだったに違いありません。
輪ゴムだったからまだよかった。
もっと他の大切なものだったら……

Mさんには
亭主関白だけど、優しいご主人がおられました。
Mさんの価値観がすこし分かりにくいこともあり
ご主人に助けてもらうことも 度々でした。
Mさんは
「あのくそじじい!どうしようもないで!」と言いながらも
「じいちゃんが好きやからな」と
上等なお肉や つやつやのナスを よく焼いたりしていました。
ご主人が旅立たれ、
それからまもなく、
Mさんも突然、天国へ行ってしまいました。
まるで、ご主人が心配して連れて行ってしまったかのようでした。
なにかストンと落ちてしまったような気持ちになりました。
それは今だに変わらず、
折々にふとMさんのことを考えています。